れが音響に関するレーリーの研究の序幕となったのである。彼が音響の問題に触れるようになった動機は、ある先生から是非ともドイツ語を稽古しろと勧められ、その稽古のためにヘルムホルツの Tonemspfindungen を読んだのが始まりだそうである。この最初の研究実験はターリングの邸宅の古いグランドピアノの上で行われたのである。
色の研究をしているうちに、空の色の影響に気が付き、それから、空の色そのものの研究に移り、ついに有名な λ−4[#「−4]は上付き小文字] の方則に到達した。そうしてクラウジウスやティンダルの説を永久に否定してしまった。
これより先、一八六九年にロンドンで彼の学友アーサー・バルフォーアの二人の姉妹エリーノア(Eleanor)とイヴリン(Evelyn)とに紹介され、その後しばしば出遭う機会があった。イヴリンは音楽を好んでいたので、レーリーはヘルムホルツの書物を貸してやり、それが二人に共通の興味ある話題を提供した。その頃彼はソルスベリー卿の実験室を訪れて磁気に関する実験を見せられたりした。その時母に送った手紙に「あんなに不器用では実験家として成効しそうもない」と云っ
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