についた。そうして旧知の人にめぐりあったような気がしてさっそく一本を求め、帰りの電車の中でところどころ拾い読みにしてみると、予想以上におもしろい事がらが満載されてあるように感ぜられた。それからあちらこちらの往復に電車で費やす時間を利用してともかくも一度読了した。その後ある物理学者の集会の席上で私はこの書の内容の梗概を紹介して、多くの若い学者たちに一読を勧めたこともあった。
ことし(一九二八)になって雑誌ネチュアー(四月十四日発行)の巻頭紹介欄に
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Munro's Lucretius. Fourth Edition, finally revised.
[#ここで字下げ終わり]
に関するダルシー・タムソンの紹介文が現われた。それによると、この書の第二巻目はマンローの詳細なる評注に加うるに、物理学者のダ・アンドラデ(E. N. da C. Andrade)の筆に成るルクレチウスの科学的意義に関する解説を収録してあるということであった。それでこれを取り寄せてその解説を読むと同時に、また評注の中の摘要をたよりにしてもう一度詳しく読み返してみた。しかして読めば読むほどおもし
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