のだという。相手がウニコールであるとは云いながら甚だ罪の深い仕業であると云わなければならない。
五
三四三頁にはこんな事がある。
スマトラのドラゴイア人の中で病人が出来ると、その部落の魔法使いを呼んで来て、その病気が治るか治らないかを占《うらな》わせる。もし不治と云えばその病人の口を蒸《む》して殺してしまう。そして親類中が寄ってその死体を料理して御馳走になる云々。
役人や会社銀行員があるただ一人の長上から無能と宣言されただけで首をきられる。するとその下の地位にいる同僚達は順繰りに昇進してみんな余沢《よたく》に霑《うるお》うというような事があるとすると、それはいくらかはこのドラゴイアンの話に似ている。
六
三四四頁には尻尾《しっぽ》のある人間の事が出ている。犬の尻尾くらいの大きさだが毛が生えていないとある。譬喩的《ひゆてき》には今でも大概の人間がみんな尻尾をぶら下げて歩いている。これは誰も知る通りである。
三五八頁には右の手を清浄な事に使い、左の手を汚《けが》れに使う種族の事がある。
これもある意味では世界中の文明人が今現にやってい
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