り[#「しきたり」に傍点]だと答えた。吾々に先立った人がこういう風にして吾々に残した。それで吾々もこうして子孫に伝えるのだと云ったとある。
その話のすぐ下には、日本人の間に食人の風俗があるように書いてあるくらいだから、上の話も当てにはならない。しかしオリジナリティを尊ばない国民性のようなものが上の話の中に表われているのは不思議である。
四
三三九頁を見ると、
フェレチ王国の人々は朝起きた時に一番先に眼に触れたものを、その一日中崇拝するという事が書いてある。
新輸入の思想の初物を崇拝する現代の多数の人達とこの昔の王国の人とどこか似たところがあるような気がする。こういう風にして行けば頭がいつでも新鮮で、沈殿《ちんでん》したり黴《かび》が生えたりする心配がなくていいかもしれないが、ただ少し忙し過ぎて困るような気もする。
これとは関係はないが、次の頁の脚註に、中世の博物学書に記述されたウニコール捕獲法というのが書いてある。純潔な処女をこの一角の怪獣の棲家《すみか》へ送り込むと、ウニコールがすっかり大人しくなって処女の胸に頭をすりつけて来る。そこを猟師がつかまえる
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