った事にはそういう罪人をつかまえる為政者の方でもちゃんとそれを承知しているから、あらかじめ犬の糞《ふん》を用意しておいて、すぐにそれを食わせ、そうしてすっかり毒を吐き出させてしまう。これではせっかくの毒も何の役にも立たなくて、結局犬の糞を食わされるだけが余計な事になる訳である。それにもかかわらずこのような事が繰り返されていたとすれば、犬の糞の効力の及ばない場合が相当に多かったかもしれない。
これと同じ章に足を有《も》った蛇《へび》の記載が出ている。多分|鰐《わに》の事だろうが、その説明がかなり面白いものである。
二
二四八頁にはカルダンダンという地方の風俗が述べてある。その中に、この地方の人は男女ともに黄金の薄い板を歯にかぶせて飾りにするとある。
この金の板の着せ方がよく分らないのであるが、とにかく現代の吾等の同胞の中にも健全な歯に黄金の板をかぶせて装飾としている人がかなり多数にある。
三
三二八頁にある日本《ジパング》に関する記事の中にこんな事がある。
この国の人に、何故そんな色々の形の神像を作るかと聞くと、これは先祖からのしきた
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