まじょりか皿
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)木枯《こがら》しの強く吹いた晩
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)折々|牛込《うしごめ》の方へ出ると
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)まじょりか[#「まじょりか」に傍点]皿
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)困る/\とこぼしながら
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十二月三十一日、今年を限りと木枯《こがら》しの強く吹いた晩、本郷四丁目から電車を下りて北に向うた忙がしい人々の中にただ一人忙がしくない竹村運平君が交じっていた。小さい新聞紙の包を大事そうにかかえて電車を下りると立止って何かまごまごしていたが、薄汚い襟巻《えりまき》で丁寧に頸から顋《あご》を包んでしまうと歩き出した。ひょろ長い支那人のような後姿を辻に立った巡査が肩章を聳《そびや》かして寒そうに見送った。
竹村君は明けると三十一になる。四年前に文学士になってから、しばらく神田の某私立学校で英語を教えていた。受持の時間に竹村君が教場へはいるときに首席にいる生徒が「気を付け」「礼」
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