に結合せしむるはこれこそ誠に進化の一般の目的であると云はれなければならない。
進化の一要素として唯一恋愛の必要を深く認むる人々でさへもそれ以外になほ多くの諸要素の存在を認容しなければならない。いかに熱狂なる理想主義と雖もそれ等を進化の過程中より除去することは出来ないのである。
二個の細胞と二個の細胞精神より吾人の複雑なる存在を創造し、現在に於て種族を決定する諸種の結婚の形式と恋愛の理想とを生み出せる生命の力は数億万年以前に始められたる進化の連鎖中に於ける一|鏈環《れんかん》に過ぎぬのである。而して吾人はこの恋愛の進化が何等前提せられたる理想の模型もなくして遂行せられたるを知るが故に、|愛の神《エロス》は現在の上に吾人が今や曙光の自覚を有し始めつつある理想的様式を道徳的標準として課することなく依然として渾沌たる性的関係中より世界の改造を持続するであらうといふことを疑ふに都合よき何等の理由もないのである。一方に於て又この問題が全く『自然的本能』或は官能の満足に委《まか》し去らるべきものと考ふる人々、或はその善悪正邪は偏《ひとえ》に神聖なる本能によつて定めらるべきであると信じてゐる人々は
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