晰なる判断を有する人々はかの学校の寄宿舎に於けるが如き口吻をもつて政界の腐敗を論ずることを当然止めなければならない。政治の腐敗は種々なる政治上の人物の徳不徳と何等の交渉もないのである。その原因は全く物質的のものなのである。「奪ふ者は与ふる者よりも幸福なり。」「安く買つて高く売れ。」「汚れたる一つの手は他の汚れたる手を洗ふ。」――政治とは畢竟《ひっきょう》かくの如き座右銘を有する実業界の反映に過ぎないのである。所謂選挙権を有する婦人と雖《いえど》もかゝる政治界を純清ならしむる希望は殆んど絶無なのである。
解放は又男子と平等なる経済的独立を女子に与へた。即ち女子は各自の好む職業に従事することが出来るやうになつた。然しながら女子の過去並に現在の体力修練が男子に拮抗すべき必然力を充分具備して置かなかつたが為に、女子は屡々《しばしば》男子と同等なる市価を得んがためには全神経を緊張させ、全精力を消耗し尽さなければならない。結果は女子の不成効に終つてゐる。女教師、女医者、女弁護士、女建築家、女技師等は男子の競争者の如き信用と報酬とを得てはゐない。而《しか》して偶々《たまたま》その憧憬せる平等に達す
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