少し歩いているうちにはどこか洗える処があるかもしれないと思いながら、そのまま土手を上がった。白く乾き切った道が、気持よく走っている。けれど、一と足そこに踏み出すと思わず私はそこにしゃがんだ。道は小砂利を敷きつめてあって、その上を細かい砂が覆うている。むき出しにされて、その上に冷たさでかじかんだ足の裏には、その刺戟が、とても堪えられなかった。といって、今泥の中から抜き出したばかりの足を思い切って草履の上に乗せることもできなかった。
「おい、そんなところにしゃがんでいてどうするんだい。ぐずぐずしていると日が暮れてしまうじゃないか。」
 そういってせき立てられる程、私はひしひし迫ってくる寒さと、足の痛さに泣きたいような情なさを感ずるのだった。それでも、両側の草の上や、小砂利の少ない処を撰るようにして、やっとあてにした場所まで来て見ると、水は青々と流れていても、足を洗うような所はなかった。私はとうとう懐から紙を出して、よほど乾いてきた泥をふいて草履をはいた。二人はやっとそれで元気を取返して歩き出した。
 日暮れ近い、この人里遠い道には、私達の後になり先になりして尾いてくる男が一人いるだけで、他
前へ 次へ
全69ページ中65ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
伊藤 野枝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング