戦うことはできないであろうか。
私が今日まで一番自分にとって大切なこととしていた「自己完成」ということが、どんな場合にでもどんな境地においても、自分の生活においての第一の必須条件であるという事は、私にはだんだん考えられなくなってきた。
私達は本当に、どんな場合にでも、与えられるままの生活で、自分を保護する事より他に出来ないのであろうか。
「虐げられているのは少数の者ばかりじゃないのだ。大部分の人間が、みんな虐げられながら惨めに生きているのだ。今はもう、何だって一番わるい状態になっているのだ。」
深い溜息といっしょに、私はこんなことしか考えることはできなかった。幾度考えてみても同じことだった。
けれど、私はこうして自分の考えを逐いまくられると、きまって夢想する他の世界があった。
ほんの些細なことからでも考え出せば人間の生活の悉ゆる方面に力強く、根深く喰い込み枝葉を茂げらしている誤謬が、自分達の僅かな力で、どうあがいたところで、とても揺ぎもするものではないという絶望のドン底に突き落される。ではどうすればいいだろう? 私はそのたびに、自分の力の及ぶかぎり自分の生活を正しい方に向け正
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