るにも考えずには出来なかったのです。満一ヶ月の間は、私はただその事ばかりを考えたのです。事実私はその考えの中で、Oによって私の生活が、ある力を与えられ、生き甲斐のあるものになるであろうという事によく気がついたのです。今まではばらばらだった私の生活に対する憧憬が形をもってきました。ただ一つOから私を妨げるのは世間の批難一つでした。私はその批難を受ける事を決心しました。
私が最初の結婚から得たものは、充分に考える事の出来ないような若さで結婚した事に対する悔いです。一方からいえば、そうしなくてはならないようなふうな位置におかれた事も一つの原因になってはいましょうが、それよりも何にも考える事が出来なかったのが一大過失でした。
それでも、私はまだ男に教育され激励されて、とにかく、自分の生活の根本的な間違いまで気づき、それによって、もっと生活を正しくすすめる事も出来たのです。それは立派な収穫でした。しかしこれがもしいい加減な男だったとしたら、――私はきっと下らない一生をおしまいにしたかもしれなかったのです。私は私のかつて友達だった人々の間に、惜しい一生を男に隷属して自分だけの生活をとり返すこ
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