家をはなれよう、とどれほど思ったかしれません。けれども家の中の事はみんな私の手をまつことばかりで、いつにもぬけようはありません。
 でも、私はとうとう決心したのです。そしてずいぶんひたむきにもなれるくせに気の弱い私は、母に一時だけ子供をつれて田舎にひとりで行かして貰いたいと切り出したのです。そしてTには自分の生活をもっと正しくするために少し考えたいから、とにかくしばらく別れてみたいといったのでした。そして双方から承諾を受けたのです。そして私はその準備をするために働いていました。
 私達はいつでも、嫌になったら離婚をする事を原則としてくらしていました。けれども、それは周囲のいろんな係累に妨げられて、容易に実行の出来る事ではないのでした。それでも、私はとうとうそこまで漕ぎつけてきました。ずいぶん長い間を考えて考え抜いたあげくにようようそこまでの決心が出来たのです。
 もちろん、子供の事にも私はかなり苦しめられてきたのでした。私共の離婚が子供にどんな不幸を持ってくるか、という事もずいぶん真剣になって考えてみました。しかし、私はもし私がこれ以上辛抱してこの境遇にいれば、もっと時が重なってくると
前へ 次へ
全22ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
伊藤 野枝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング