俺は汝に対する態度をいっそう明白にするつもりだ。俺は遊んでいる心持ちをもちたくないと思っている。
 なにしろ離れていたのじゃ通じないからな、出て来るにもよほど用心しないと途中でつかまるぞ、もっと書きたいのだけれど余裕がないからやめる。
[#地から3字上げ](十五日夜)
[#ここで字下げ終わり]
 いろいろなすべての光景が一度になって過ぎていく。今までまるでわからなかった国の方のさわぎもいくらか分るような気もするし、学校での様子などもありありと浮かんでくる。
 ここから上京するまでの間に見つかるなどいうことも今まで少しも考えなかったのに、急に不安に胸を波立たせたりしながら、読み終わって登志子はしばらく呆然としていた。
「結婚した」といわれるのが登志子には涙の出るほど口惜しかった。しかしやはりしたといわれても仕方がなかった。登志子自身の気持ちではどうしても結婚したということは考えられないのだけれど――彼女はその時から今日を予想してそれが一番自分に非道な強い方をした者に対する復讐だと思った。しかし今自分の気持のどこをさがしてもしかえし[#「しかえし」に傍点]をしてやっているのだというような快
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