し強くならなければ駄目だ。とにかく上京したらさっそく俺の所にやってこい。かまわないから、俺の家では幸にも習俗に囚われている人間は一人もいないのだから。母でも妹でもずいぶんわけはわかっている。そうして俺を深く信じているのだ。もちろん汝に対して深い同情?Lしている。遠慮をせずにやってくるがいい。だが汝はきた上でとても俺の内に辛抱ができないと思ったら、いつでもわきに行くがいい。俺は全ての人の自由を重んずる。御勝手次第たるべしだ。それにN君も心配しているのだから、それにS先生だって汝の理解出来ないような人ではなし、なんでも永田という人のところに「あの女はとても駄目だから、あきらめたほうがいい」というような手紙を送ったそうだ。とにかく東京へくれば道はいくらでもつく、そんなに心細がるなよ、だが汝は相変らず詩人だな、まあそこが汝の尊いところなのだ。今に落ち付いたら[#「落ち付いたら」は底本では「落付ちいたら」]詳しく出奔の情調でも味わうがいい。俺は近頃汝のために思いがけない刺戟を受けて毎日元気よく暮らしている。ずいぶん単調平几な生活だからなあ。
 上京したらあらいざらい真実のことを告白しろ、その上で
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