しろ滑稽に感じたくらいだった。S先生はさすがに汝をやや解しているので同情は十分持っている。だが汝の行動に対しては全然非を鳴らしているのだ。俺はいろいろ苦しい思いを抱いて黙っていた。その日帰ると汝の手紙が来ていた。俺は遠くから客観しているのだからまだいいとして当人の身になったらさぞ辛いことだろう、苦しいことだろう、悲しいことだろうと思うと、俺はいつの間にか重い鉛に圧迫されたような気分になってきた。だが俺は痛烈な感に打たれて心はもちろん昂っていた。それにしても首尾よく逃げおうせればいいがと、また不安の念を抱かないではいられなかった。俺は翌日(即ち十二日)手紙を持って学校へ行った。もちろん知れてしまったのだから秘す必要もない。そうして手紙を見せて俺の態度を学校に明らかにするつもりだったのだ。で、俺は汝に対してはすこしすまないような気はしたが、S先生に対しても俺は心よくないことがあるのだから。
[#地から3字上げ](十四日)
昨夜少し書くつもりだったのだがまた疲れが出てしまいのほうは何を書いているのだか解らなくなった。俺は意気地のないのに自分で呆れてしまった。
俺は今帰ってきた。五時頃だ。
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