なあ。だがそれが自然なのだ。同じ羽色の鳥は一緒に集まるのだ、それより他仕方がないのだ。だが俺等の羽の色が黒いからといって、全くの他の鳥の羽の色を黒くしなければならないという理屈はない。
[#地から3字上げ](十三日)
 学校へ「トシニゲタ、ホゴタノム」という電報がきたのは十日だと思う。俺はとうとうやったなと思った。しかし同時に不安の念の起きるのをどうすることもできなかった。俺は落ち付いた調子で多分東京へやってくるつもりなのでしょうといった。校長は即座に『東京へ来たらいっさいかまわないことに手筈をきめようじゃあありませんか』といかにも校長らしい口吻を洩らした。S先生は『知らん顔をしていようじゃありませんか』と俺にはよく意味の分らないことをいった。N先生は『とにかく出たら保護はしてやらねばなりますまい』といった。俺は『僕は自由行動をとります。もし藤井が僕の家へでもたよって来たとすれば僕は自分一個の判断で措置をするつもりです』とキッパリ断言した。みんなにはそれがどんなふうに聞えたか俺は解らない。女の先生達はただ呆れたというような調子でしきりに驚いていた。俺はこうまで人間の思想は違うものかとむ
前へ 次へ
全23ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
伊藤 野枝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング