分痺れたような痛さを我慢して、どうして一人ででも帰らなかったろう、と後悔していました。
 Mさんは早く仕事に出て行ってしまいました。Oも眠れなかったと見えて子供が少し動くとすぐ振り返りました。Y一人は気持よさそうに眠っていました。
 Yが起きると私達も帯をしめ直して、顔を洗いに外に出ました。ずらりとならんだ長屋の門なみに、人が立っていて私共を不思議そうに見ていました。私は大急ぎで顔を洗うと、逃げるように家の中にはいりました。
 Yが近所の人から聞いた話だと、昨晩から、三人も刑事が露路の中にはいってきているので、長屋中で驚いているというのです。間もなく私共は三人で外に出ました。
 通りへ出て少し歩いていますと、私共の尾行が、すぐ後ろに三人くっついてきます。
「尾《つ》くのは構わないがね、もう少し後へさがって尾《つ》いて来て貰いたいね。」
 私はあんまりうるさいので、一人の男にそういいました。彼はぶっと面をふくらせて私を睨みつけました。私は構わず、少し後れていたので、急いでYとOにおいつきました。
 が、気がつくと彼等はやはりすぐ後ろから来ます。
「今いったことがお前さん達には分らないのか
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