形で、つきあたりの押入れは半分が押入れで、あとの半分が便所という住居でした。露路をはいると、何ともいいようのない一種の臭気に閉口しながら、Yの家にはいった私は、そこでもその臭気に悩まされ続けました。
話がはずんで、少し遅くなって帰ろうとすると、Yは泊ってゆけとしきりにとめるのです。私はその無茶な申出に驚いていました。さすがにMさんは、
「こんな処に泊めちゃ迷惑じゃないか。」
とYをとめていましたけれど、Yはそんなことにはいっこうおかまいなしです。「くっつき合って寝れば八人は寝られる」と彼はムキになって主張するのです。
「後学のためだ、一つ我慢して泊って見るか。」
とOは私を振りむいていいました。
「とんだ後学だなあ。」
Mさんも私の顔を見ながら気の毒そうに苦笑しました。
「この辺の様子が、夜でちっとも分らなかったろう? 明日の朝もっとよく見て行くことにして泊ろうか。大分おそくもあるようだ。」
「ええ。」
私も仕方なしに、泊ることにしました。
その夜私は一晩中、うすい蒲団の中でゴロ寝の窮屈さと、子供を寒くないように窮屈でないように眠らすために、寝返りをすることもできず、体が半
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