一に、多くの人達によって意識的に、あるいは無意識的に待ちかまえられている私の別居が実現されたときに、当然になされるはずのいろいろなせんさく[#「せんさく」に傍点]から、大杉さんの事が必ず問題になるだろうということを考えないではいられませんでした。私の大杉さんに対する気持が、まだはっきりしないうちに、世間の人達によってつまらないことをいわれるということは、私にはとても耐えられないことでした。それで、私はその気持がきまらないうちは、別居ということは実行が出来ないだろうと思いました。けれどもまた私は、そういう気持を抱きながら毎日顔をつき合わしているということにも、苦痛を感ぜずにはいられませんでした。私はその二つの苦痛から同時に逃れようとしました。しかしそれにはあまりいろいろな情実が隙間なくからみついていました。それ等のすべてを同時に断ち切るというようなことをして後悔をするようなことは、なるべくしまいとして、出来るだけきれいに処置をつけてゆきたいということが、また私の自身に対する望みでした。自分にも、ボンヤリしたような、曖昧なことは決してないようにしたい、無理をしまいと思いました。けれども私の
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