を受けるようなことを残しておきたくないという例の私の負け惜しみから、まず大杉さんと自分とのことに釘をさしておいてからにしようと思いました。それで、私はすぐに、大杉さんに会いにゆこうと思いました。そしてそうきめた翌日出かけました。私はそのとき、自分のその事については非常に軽い気持ちで会うつもりでした。ところが私は、神近さんにそこで出会いました。そうして、三人で話を始めましたときに、私が考えていたよりは、たいへんに重大な事件だということを感じ始めました。それをその時まで、私は大杉さんと私、ということよりも、辻と私ということにばかり考えを向けていて、大杉さんについてはそれほど深く考えようとしなかったのです。ところが、これは神近さんにとってたいへんな問題であるのは無理のない話です。そうして私は、今度は当然そのことについて考えなければなりませんでした。私はその日、この問題はしばらく持ち越すつもりだということをいい残して別れました。
その時の私のつもりでは、一刻も早く辻との別居を実行して、それから大杉さんに対しての自分の態度をきめたいと思ったのでした。しかし、この気持はすぐに破れました。それは第
前へ
次へ
全15ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
伊藤 野枝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング