ん》はふと狂気じみてゐた。楢雄は鼻の穴へ紙を詰めると、すぐ家出を考へたが、これは寿枝が停めたので、二階へ上り、ひそかに隠してあつた「運勢早見書」を開き、自分の星の六白金星と父の九紫火星とが相性《あひしやう》大凶であることを確め何か納得した。ついでに母の四緑《しろく》木星も六白金星とは合はぬと判つた。六白金星一代の運気は、「この年生れの人は、表面は気永のやうに見えて、その実至つて短気にて些細なことにも腹立ち易く、何かと口小言多い故、交際上円満を欠くことがある。親兄弟との縁薄く、早くより他人の中にて苦労する者が多い。また因循《いんじゆん》の質にてテキパキ物事の捗《はかど》らぬ所があるが、生来忍耐力に富み、辛抱強く、一端かうと思ひ込んだことはどこまでもやり通し、大器晩成するものなり……」
 一字一句が思ひ当り、この文章がわづかに楢雄を慰めた。そして一晩掛つてこの文句を覚えることで、父に撲られた口惜しさがまぎれるのだつた。
 翌日から楢雄は何思つたのか「将棋の定跡」といふ本を読み耽つた。著者の八段は「運勢早見書」によれば、六白金星で中年を過ぎてから三段になつて大器晩成の棋師だといふことだ。楢雄
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