と咄嗟に自分に云いきかせる余裕だけは、さすがに残っていた。
いや、それがあるからこそ、
「たすけよう」
という気がますます強く起ったのだった。
一旦こうしようと思えば、もうどんなことがあっても、あとへ引かぬのが豹吉の性質だ。
豹吉はじっと息を凝らして雪子を連れた警官のあとをつけていた。
警官は橋を渡ると、真っ直ぐ桜橋の方へ歩いて行った。
雪子の白い手には手錠が痛々しく掛けられている。豹吉はその手からじっと眼をはなさず、
「まず、あの手錠を切ることやな!」
と、ひそかに呟きながら、ついて行った。
「――しかし、あの手錠を切ることは、袂を切るよりは、ちょっとむつかしいぞ!」
そう思ったが、しかし、困難ということほど、豹吉にとっては、実行への誘惑をそそるものはまたとないのだ。
「何くそ!」
と、力んで、豹吉はいつもの蒼白い額を一層蒼白にしていた。
雪子を連れた警官は、桜橋から右へ折れて、梅田新道の方へ歩いて行った。
闇市はすぐ近くだ。
「雪子を奪って、闇市の雑踏の中へまぎれ込むのや」
豹吉はひそかにそう呟いた。
二人はやがて闇市の傍を通り掛った。
「今だ!」
と、
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