や、忘れられるものか――雪子だった。
雪子――阿倍野橋の宿屋で小沢の帰りを待っていた筈の雪子が、小沢が著物を持って帰ってやったわけでもないのに、いつ、どうして宿の外へ出たのか。
そしてまた、いつ、どこで、どんな悪いことをして、警官につかまってしまったのか。……
雪子は小沢の帰りを待っていたが、到頭待ちくたびれて、しびれを切らしてしまったのだった。
むろん、小沢にはもう一度会いたかった。
が、それだけに、小沢が帰って来ることが、怖くもあった。
小沢が帰って来れば、きっと、昨夜の裸の原因をきかれるに違いない。
昨夜は頑として、答えなかったが、もう今日となってみれば、いつまでも黙っておるわけにはいかないような気がした。
だから、小沢が帰って来て、そのことをきかれるのが怖かったのだ。
それに一刻も早く宿を出たかった。
といって、しかし、著物なしでは外へ出られない。
思案に困って、ふと廊下へ出ると隣の部屋のドアがあいていて、女の著物が著物掛けに掛っているのが眼にはいった。
部屋の中をうかがうと、誰もいない、その著物の主は、べつの著物と著かえて外出しているのだろう。
ふと
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