は死んでしまったのだな」
と、ふと思うと、急にガタガタ足がふるえて来た。
「なんや、ふるえてるぞ」
だらしがないじゃないかと自嘲していると、豹吉は急に持前の、人をあっといわせたいといういつもの癖が頭をもたげてむずむずして来た。
「人を驚かせるが、自分は驚かないのがダンディの第一条件だ」
というおきてを守っている豹吉だった。
だから、一たび、
「何か人をあっといわせるようなことをしてみたい」
と、思うと、もう腹の虫がむずむずして来て、いても立ってもおられなかった。
「どんなことをして、人をあっといわせてやろうかナ」
川を覗きこんでいた顔をきっと上げて、豹吉は豹のような眼を輝かせて、いきなり振りむくと、ペッと唾を吐いた。
途端に、豹吉はどきんとした。
渡辺橋の上を、警官が一人の女を連れて渡って行くのを、見たのだ。
警官を見て、どきんとしたのではなかった。
警官に連れられている若い娘を見て、驚いたのだ。
手錠を掛けられて、警察へ連れられて行くのであろう、しょんぼりうなだれて、顔が半分かくれていたが、しかし、その美しく整った顔には、見覚えがあった。
忘れもしない――い
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