、どう……?」
お加代はいきなり娘の頬を撲りつけた。
娘はキョトンとした眼で、撲られたあとを押えもせず、お加代を見上げていた。
「何さ、その平気な顔は……」
もう一度撲ろうとすると、
「おい、お加代!」
と、声が来た。
「――堪忍してやれ、そいつは唖やぜ」
そう言いながら寄って来たのは、例の刺青の男だ。
「え……? 唖だって……? 本当かい、針助さん」
針助という名を記憶している読者がいる筈だ。
いやもっと記憶の良い読者なら「ガマンの針助」という名でおぼえている筈だ。
更に、昼間、ハナヤでお加代が豹吉に、雪子が昨夜拾った男が「ガマンの針助」だと、語って、危く豹吉を狼狽させかけたことを、おぼえている読者もあろう。
ガマンとは、大阪でいう刺青の方言だ。だから、刺青の針助と書いてもいいわけだ。
「本当かい……テ、お前もよっぽど勘が悪いな。唖でなかったら、一言くらいものを言う筈やろ」
針助はお加代に言った。
「――その金は返してやれよ」
「唖からとるのはいけないって、いうの……?」
「そやない。実は、こいつ今日から、身内になりやがったんや」
「仲間に……? この唖が……?」
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