の方へ歩いて行くではないか。
このコースは昨夜小沢が土砂降りの雨の中を歩いて行ったコースであった。
そして、今小沢はその同じコースを辿るのである。
自然、小沢はその二人のあとを尾行するといった形になったが、勿論、尾行するつもりで歩いて行ったのではない。
小沢はただ細工谷町の友人を訪ねるために、その道を歩いているというに過ぎなかったのだ。
ところが、刺青の男と唖の娘が、昨夜小沢が雪子と出会った四ツ辻まで来て、いきなり北へ折れて行くのを見ると、
「おやッ!」
と、思って、友人の家へ行く道を急に変えて、その二人のあとを尾行する気になった。
刺青の男は、半町ばかり行くと古風なしもた家の前で立ち停った。
そして、手真似で唖の娘をうながすと、その家の中へはいってしまった。
ひそかに尾行していた小沢は、何気なくその家の前を通り過ぎざまに、ちらと標札の文字を見上げた。
「横井喜久造……」
その名前を記憶の中に入れて、小沢は四ツ辻までひきかえした。
そして、そこから二丁ばかり東へ行くと、友人の家があった。
「伊部恭助」
稍左肩下りの、癖のある、しかし達筆の字で書かれた標札を見た途
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