場の中にある食堂へはいって行くと、ここにもまた大阪の憂鬱があった。

 小沢は朝から――というより、昨夜から何も食べていなかった。
 米を持っていなかったから宿屋では食事を出してくれなかったのだ。
 実は、復員の時にもらった三日分の米を、毛布の中へくるんで大阪駅へ預けて置いたのだった。
 それを受け取って、毛布や長靴を売って、雪子の著物を買い、宿に帰って米を炊いてもらおうと正直に考えていたのだ。
 外で食事が出来るとは、考えも及ばなかったのだ。
 だから、預けた荷物がいつの間にか無くなっていたと判ると、小沢は何よりも先に、
「今日は何にも食えないかも知れんぞ!」
 と、まずそのことを諦めた。
 ところが、あてもなく闇市場を歩いていると、パンを売っているばかりか、食堂の飾窓にはカレーライスの見本もも[#「見本もも」はママ]出ているではないか。
 小沢はいそいそと中へはいったのだ。
「カレーライス出来る……?」
「出来ます」
「ライス……って米なの……?」
「純綿です」
「純綿……?」
 と、きき返したが、
「――ア、そうか。白米か」
 と、すぐ判った。
 値をきくと、十五円だという。

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