いていないのだ。
 豹吉は拍子抜けした。何かすかされた感じだったから、もう一度声をはげまして、
「殺人罪です、すぐ送局して下さい。覚悟はしています」
 と、言った。
「まア、そのことはあとで調べる。――とにかく、はいっとれ。おい、煙草は捨てるんだ」
 にやにやしながら、一同を留置場へ連れて行った。
 お加代と唖娘は女の留置場へ――。
 豹吉は亀吉たちと一緒に留置場の小さな入口――というより、穴をくぐってはいった。
 そして、じろりと中を見廻した途端、
「あッ!」
 豹吉は思わずぎょっとして、棒を呑んだようになった。

 豹吉がぎょっとしたのは、針助が坐っているのを見たからではない。
 針助がつかまったことは、小沢から聴いていた。
 だから、そのことでは、豹吉は驚かなかった。
 豹吉が見たのは――。
 留置場の隅の方に、しょぼんと坐っている伊部の姿だった。
 伊部――今朝、渡辺橋で釣をしていた得体の知れぬ奇妙な男!
 その男を殺した――と、たった今刑事に白状して来たのだ。
 ある時は、その殺したという罪で、自責の念にかられ、ある時はそのことを昂然と口にすることで少年らしい虚栄心を満足させ
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