人ですか」
「いや、女と一緒です」
「どうぞ……」
 新円の効き目だった。
 小沢は娘を呼びに出た。
 そして、娘を自分の背中にかくすようにして、はいった。
 女中はちらりと娘をみたが、さすがに連込み宿らしく、うさん臭そうな眼付きもせず、二階の部屋へ二人を案内した。
 鍵の掛る、粗末なダブル寝台のある洋風の部屋だった。
 女中は案内すると、すぐ出て行ったが、やがて、お茶と寝巻を持って来た。
「お名前をこれに……」
 小沢は自分の姓名を書いて渡そうとすると、
「こちらさんのお名前もご一緒に……」
 と、椅子の上で体をすくめている娘の方は見ずに、女中は言った。
 小沢はちらと娘の顔を見た。
「雪子……」
 娘は察して言った。
 小沢は自分の名前の横に「妻雪子 二十歳」と書いて、女中に渡すと、
「お休みなさい」
 女中は出て行った。
 小沢はほっとして、部屋の中を見廻した、寝台は一つしかなかった。その上の方に、安っぽい女の裸体画の額が掛っていた。
「なるほど、こりゃいかにも連込み宿だ」
 小沢は改めて感心したように呟きながら、苦笑した。
 ダブル寝台――といっても、豪華なホテルにあるような、
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