た時は――。
豹吉を取り巻いている隼団の連中を兵古帯のお加代をはじめ青蛇団の連中が取巻き、龍太の拳銃とお加代の拳銃が虚々実々の阿※[#「口+云」、第3水準1−14−87]《あうん》の呼吸をはかりながら、今にも火花を散らそうとしていた。
「諸君!」
と、小沢は声をかけた。
「誰や、お前は? ……どこのどいつや」
と、隼団の一人が言った。
「僕は一介の復員兵士だ」
と、小沢は言った。
「――僕は君たちのように、龍だとか豹だとか虎だとか、親のつけた平凡な名前以外の名前を持っておらん。また、青蛇だとか、隼だとか、まるで動物園まがいの団体にも加盟しておらない」
「何ッ……? お前らの出る幕やない。引っ込んでろ」
と、一人が叫んだ。
小沢は平然として、物凄く速い口調で喋り立てた。
「なるほど、僕は出番をまちがえて、他の役者の出る幕の舞台へ飛び出した間抜け役者かも知れない。しかし、とにかく舞台へ飛び出したのだ。何とか科白を喋ってから引き下るということにしなければ、恰好がつかないし、今更引っ込みもつかない」
「じゃ、何を喋りに来たんや」
「結論を先に言おう」
と小沢はじろりと一同を見廻して、
「――喧嘩というものが、いかにくだらぬものであるかということを、君たちに納得させたいんだ」
「大きにお世話や。引っ込んだらどうや」
「まア、聴け! 日本人はかつては、暴力や喧嘩沙汰の好きな国民だった。だから戦争をおっぱじめて、こんなみじめなことになってしまったんだ。ところが君たちは、これからの日本の再建に一番重大な役割を果さなきゃならない君が、今なお暴力や喧嘩を好み、腕力でことを決しようとしている」
小沢はいつか演説口調になっていた。
「――こんなことで、一体どうなるんだ。しかも、君たちの中には、携帯を禁じられている銃を、持っている者もいる。君たちは瀕死状態の日本を、ますます窮地に陥入れたいのか」
「…………」
誰も答えなかった。小沢はつづけた。
「世には、暴力を以てしか解決できないような問題は、何一つとして存在しない筈だ。撲らなきゃ判らないというのは、もう昨日の日本人の言葉だ。今日の日本人は、人を撲ったり、傷つけたり、殺したりする野蛮な手を封じられた代り、口を使ってする自由は許されている。口は飯を食うためのものだ。が、飯は腹一杯食べられない。だからといって、口の用途を十分発
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