りは、龍太の拳銃に射たれて、死ぬ方がいいと思った。
「おれは、今朝、人を殺したのだ。その罪のつぐないに、死のう!」
このような想いが、瞬間、高速度の早取り写真のような速さで、はっと豹吉の頭に閃いた。
豹吉は、カッと拳銃の先を見つめながら、
「射て!」
と、言った。
――いや、言いかけた、と同時に、
「お待ち!」
と、いう女の声が、聴えた。その声はまた、
「一〇!」
と、最後の数字がさすがにふるえた声になって龍太の咽喉まで出掛っていたのと、同時でもあった。
いわば、その場所にいた連中は、
「射て!」
「お待ち!」
「一〇!」
という三つの声を、同時に聴いたのだった。
豹吉ははっとして、声の方を見た。
「あ、お加代!」
龍太もふり向いて、
「あッ!」
お加代の右の手には拳銃が……。
その拳銃は、龍太の背中に向けられていた。
お加代は左の手で、唖の娘の肩を抱きながら、拳銃の引金に掛った右の手の指先に力をこめて、
「……豹吉を射つなら、射ってごらん。その代り、あんたの背中に穴があくわよ」
と龍太に言った。
「しまったッ!」
龍太は思わず、唇を噛んだ。
隼団の連中は隙を見て、お加代に飛び掛かろうとした。
「じたばたおしでないよ」
お加代はにやりと笑って、
「――命の惜しい奴は、動かない方がいいわよ。いいえさ、一寸でもあんた達の肩が動いてごらん、兵古帯のお加代の拳銃の玉は、十読む間も待たずに、飛び出して行くわよ」
その時、
「兄貴! 安心せエ! 追いついたぜ!」
と、声が来た。
見れば、亀吉をはじめ、青蛇団の連中がかけつけて来たのだ。
お加代をはじめ、青蛇団の連中はハナヤの前に落ちていた青い蛇の絵カードを見て、かけつけて来たのだ。
そのカードの裏には「十時、中之島」と亀吉の下手な字が書かれてあった――と今ここで説明するのは、それこそ蛇足であろう。
空には星が一杯……降るようなその星空に銀河が横たわって、大阪の一隅のこの出来事を、しずかに見下していた。
中之島公園における青蛇団対隼団の緊迫した空気を、銀河が上から見下している間に、作者は大急ぎで話を少し前に戻すことにする。
小沢はあれからどうしたのだろうか。
あれから……というのは、つまり――。
小沢は雪子への土産の寿司を持って、阿倍野橋の宿屋へ帰る途中、亀吉に会って、亀吉が
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