馬地獄
織田作之助
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)大江橋《おおえばし》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大衆|喫茶店《きっさてん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](昭和十六年十二月)
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東より順に大江橋《おおえばし》、渡辺橋《わたなべばし》、田簑橋《たみのばし》、そして船玉江橋まで来ると、橋の感じがにわかに見すぼらしい。橋のたもとに、ずり落ちたような感じに薄汚《うすぎたな》い大衆|喫茶店《きっさてん》兼|飯屋《めしや》がある。その地下室はもとどこかの事務所らしかったが、久しく人の姿を見うけない。それが妙《みょう》に陰気《いんき》くさいのだ。また、大学病院の建物も橋のたもとの附属《ふぞく》建築物だけは、置き忘れられたようにうら淋《さび》しい。薄汚《うすよご》れている。入口の階段に患者《かんじゃ》が灰色にうずくまったりしている。そんなことが一層この橋の感じをしょんぼりさせているのだろう。川口界隈《かわぐちかいわい》の煤煙《ばいえん》にくすんだ空の色が、重くこの橋の上に垂れている
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