猫と杓子について
織田作之助
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)みすぼらしい[#「みすぼらしい」は底本では「みすぼらいし」]
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「エロチシズムと文学」というテエマが僕に与えられた課題であります。しかし、僕は「エロチシズムと文学」などというけちくさい取るに足らぬ問題について、口角泡を飛ばして喋るほど閑人でもなければ、物好きでもありません。ほかにもっと考えなければならぬ文学の本質的問題が沢山ありますし、だいいち、日本にはエロチシズムの文学などありません。エロ文学なんて、いやらしい言葉ですが、そういうものは誰も書いておりません。エロチシズムとかエロ文学なんて言葉は、ただ文学を公式的にしか考えられない一部の批評家の文章の中に出ているだけであります。そういう言葉を流行させたのは実は彼等の評論なのです。彼等はいわゆるエロチシズムの文学を攻撃する文章を極めて真面目な表情で書いておりますが、しかし、彼等の文章を読んでおりますと、彼等の使っているエロ文学だとか性の欲求だとか性生活だとかいう言葉がどぎつい感じで迫って来て、妙な逆
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