効果を現わします。逆説的にいえば、彼等の評論こそエロチシズム評論ではないか――などという揚足取りを、まさか僕はしたくありませんが、大体に於て、公式的にものを考え、公式的な文章を書く人の言葉づかいは、科学的か医学的か政治的か何だか知りませんが、随分生硬でどぎついような気がしますね。そうでしょう……?
言葉といえば、「猫も杓子も」云々という言葉があります。いつ頃出来た言葉か知りませんが、日本人がこしらえた言葉の中では、なかなか独創性に富んだいい言葉であります。表現――つまり言い現わし方そのものが独創性に富んでいるばかりでなく、「猫も杓子」云々という言葉の内容自身が、人間というものは独創的でなくっちゃいかん、不和雷同するな、人の言ったことや、したことの真似をすると嗤われるぞ――という、いわば独創の宣伝みたいな意味を含んでおります。ところがですね、「猫も杓子」も云々というような、こんな独創的な言葉を発明した日本ほど、実は猫になりたがり、杓子になりたがる人間の多い国はないのですから、全く皮肉極まる話で、いや、実にお話になりません。
みなさんは、日本を敗戦国にしたのは、軍閥と官僚だとお思いにな
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