で自分の名を呼んでいるのは、木崎だった。木崎と踊っているのだった。
 はっと眼をさますと、部屋の外で声がしていた。京吉の声だと思った途端、ほのぼのとしたなつかしさがふっと胸に来たが、しかし、
「ねえ、泊めてくれよ。ねえ」
 という、いつもの声に、思わずその胸をかき合わせていた。
「駄目よ。約束がちがうわよ」
「そんなこと言うなよ」
 と、部屋の外の声が言った。
「だって土曜日だといったじゃないの」
 土曜日には泊めてあげる――と、はっきり約束したわけではなかったが、それを言った。
「だって、おれ泊るところねえんだよ。おれ一人じゃねえんだよ。二人だよ。女と一緒だよ。泊めてくれよ」
「あたし帰る」
 芳子は何思ったのか、急に階段を降りかけた。
「あッ、芳ッちゃん、待ってくれよ。ねえ、芳ッちゃん!」
 その頃四条河原町の雨の中を、二人の男がぐでんぐでんに酔っぱらって、肩を組みながら、よろよろと歩いていた。坂野とグッドモーニングの銀ちゃんだった。

      六

「銀ちゃん、あたしゃアもはや一滴も駄目でさア」
 もう飲みまわるのはよしにしよう――と、坂野は眉毛まで濡れ下ったびしょ濡れの顔を
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