楽部でとぐろを巻いており、いいカモが来れば、三人しめし合わせて、賭金を巻き上げるのだった。
 京吉はキャッキャッ団の手を知っていた。しかも、キャッキャッ団を相手に一勝負しようという気になったのは、マージャンの腕への過信であろうか。それとも、インチキに挑戦して行く破れかぶれの賭のスリルだろうか。
 京吉はたちまち旗色が悪くなって行き、イーチャンが済む頃には、もう四千もすっていた。
「京ちゃん、やけに大人しいね。ウンとかスンとか、音を上げたらどうだ」
 グッドモーニングの銀ちゃんがにやにやしながら言った。
「バクチと色事は黙ってしなきゃア、意味ないよ」
 京吉はそう応酬していたが、しかし顔色は蒼白になっていた。
「――バクチは負けるほど、面白いんだ」
 半ば自分に言いきかせながら、京吉はガメっていたが、テンパイになった途端に、いつも上りパイを押えられていた。
 北北(ペーペー)の風が廻って来た時、京吉に北が二枚あった。紅中(ホンチュン)が二枚。うまく行けば、スー(四)ファンの、満貫(マンガン)に近い手で上られる。
「しめたッ!」
 と、叫びながら、京吉は投げキッスの泰助が捨てた北のパイをポ
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