ると、さくら井屋の中と花遊小路を通り抜けることにしているんだ」
 と言いながら、四条通へ抜けると、薄暗い小路へはいって行った。崩れ掛ったお寺の壁に凭れてほの暗い電灯の光に浮かぬ顔を照らして客待ちしている車夫がいたり、酔っぱらいが反吐を吐きながら電柱により掛っていたりする京極裏の小路を突き当って、「正宗ホール」へはいった。
 そこも三高生の寮歌がガンガンと鳴り響いていた。「紅燃ゆる」の歌もこんな風に歌っては台無しだと思いながら、豹一は赤井のあとについて、隅のテーブルに腰掛けた。たにし[#「たにし」に傍点]の佃煮と銚子が来ると、赤井は、
「君飲めるだろう?」と、盞を渡した。
「うむ」と曖昧に返事をしたが、実は飲むのは生れてはじめてなのである。飲めないと思われては癪だと、赤井がついだのを一息に飲みほしたが、にがかった。たにし[#「たにし」に傍点]を箸でつついていると、「おい、僕にもついでくれ」と言われて、周章てて下手な手つきでついでやると、赤井は馴れた調子で、ぐっとさもうまそうに飲みほした。感心してぽかんと赤井の顔を見ていると、いつの間にか自分の盞が一杯になっていた。それもにがかった。そうし
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