験のないでもない豹一がそう言うと、
「そうだ。どうやら脳黴毒らしい」赤井は簡単にそう言い放ったが、直ぐ心配そうな顔になると、最近さる所へ「肉体の解放」に行ったが、とても汚ならしい女だったから、どうやらジフレスを貰ってもう脳へ来ているかも知れないと、しょんぼりした声で言った挙句、
「僕の青春はもう汚れているんだ!」と、これはわざと悲痛な調子で言った。豹一はそんな赤井の図太い生活にふと魅力を感じたが、僕の青春云々が妙に赤井の気取りのように思われたので、「心配する位なら、行かない方が良いんだ」と突っ離すような、冷かな口を利いた。すると赤井は、「そうだ。そうだ」と苦もなく合槌を打って、「僕は心配なんかしていないぞ。ジフレスがなんだ。そう容易く罹るもんか。昨日僕はちょっと医学書を覗いてみたが、脳へ来るのには五年や十年は掛るらしいんだ。僕の頭は未だ健全なんだ」自分で自分の言葉を打ち消した。
(赤井はえらい男だが、自分の行動を誇張して人に喋りたがるのが欠点だ。つまりデカダン振るのだ。俺なら黙って行《や》る)
 豹一はそう思うと、はじめて自分と赤井との違うところが分ったような気がした。が、実は豹一も元
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