いことを赤井は知って、それを言ったのではなかろうか?
(俺の貧乏を嘲笑するつもりなら許さぬぞ)
 しかし、赤井の次の言葉を聴いて、豹一の心はすっかり明るくなった。
「実は僕は今日はゲルが無いんだ。質に入れるものもない。此のレインコートを入れてやろうと思うのだが、これは当分着ている必要があるんだ。彼等が怖くて郷に従うたと思われては癪だからね。君持っているなら今晩のところは頼むよ」
 豹一はちょっと赧くなって、
「持ってるよ」と言い、ポケットへ手を突っ込んで、なんと言うこともなしに母親が送ってくれたあの紙幣をさわって見た。
「親父が学生は金を持つと為にならんて言いやがって、ちょっとも送ってくれないから困るよ」と赤井は別に赧い顔もせずに言った。
「僕の親父は変な奴なんだ。柳左衛門という名前をつけやがったことはまあ我慢するとして、僕の中学生時代いつも教室へのこのこ参観しに来やがるんだ。すると、教師が僕に暗誦をさせるんだ。僕は親父が背後で見ていると思うと、あがってしまって、出来やしないんだ。クラスの奴等は僕の親父が来ていることを知っているから、クスクス笑いやがる。すると僕は一層あがるんだ。親父は
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