と、東山から月がするすると登っていた。それが豹一の若い心を明るい町の方へ誘うようだった。その左手の叡山には、ケーブルの点々と続いた灯が大学の時計台の灯よりもキラキラと光って輝いていた。校庭の桜の木は既に花が散り尽し、若葉の匂いがした。暗いグラウンドに佇んでいると、いきなり肩を敲かれた。見ると、同じクラスの赤井柳左衛門だった。赤井柳左衛門は寄宿舎にいるんだなと、途端に豹一は思った。
赤井はその名前が変挺なので、誰よりも先にクラスで存在を認められた。が、豹一はもっと違ったことで彼の存在を知った。赤井は教室でもっとも大胆に大きな声で笑う男だった。それも他の者と一緒に笑うのではなく、誰も笑わない時にいきなり大声で笑い出すのだった。例えば教師がこっそり欠伸を噛み殺しているのを見つけると、彼の笑いが皆を驚かすのだ。そのためには教師の講義もろくにノートせず、教師の動作に注意を配っている必要があるわけだと、ある日豹一は自分が笑おうとした途端に彼に先を越されて、すっかり敬服してしまったことがある。その前の日も、独逸語の時間にいきなり赤井は席を立つと、物も言わず教室を出てしまった。それで覚えていた。
「
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