は吉田神社の長い石段を降りて、校門の前まで来た。門衛の方を覗くと、そこに自分の名前を書いた紙片が貼出されてあった。はいって自分宛の手紙を受け取った。手紙は母から来たもので、彼は塾長に知れることを警戒して、いつも学校宛に手紙を送って貰っていたのだった。案の定、五円紙幣が二枚、べったりと便箋にはりつけてあった。為替を組むことを知らないのである。お君は豹一が塾で授業料や書籍文房具代のほかは月一円の小遣しか貰っていないと知ると、内職の針仕事で儲けた金を豹一に送って来るのだった。そのため豹一は小遣には困らなかったが、そのたびに胸を刺される思いがした。
豹一はひとけの無いグラウンドに突っ立って紙幣を便箋からはがしてポケットへねじこんだ。手紙はあとで読むことにした。何か母親の手紙を読むのが怖いのである。暗くて字が読めぬのを口実にした。
グラウンドの隅に建っている寄宿舎はわりに静かだった。皆んな夕食後の散歩に出掛けたらしかった。記念祭が近づいたので誰もそわそわして落ち着かず、新入生の歓迎コンパだと称して毎晩のように京極や円山公園へ出掛けて行くらしく、その自由さが豹一には羨しかった。
ふと振り向く
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