った。少くとも多鶴子は、豹一が自分と一緒に歩くことを喜んでいるものと釈りたかった。釈った。
つまり、その苦しい弁解はいくらか成功だった。多鶴子も満足したし、また豹一も満足出来た。誰にきかれても恥しくない言葉だったからである。
この豹一の慎重さは、なお見るべき効果を収めた。彼は厚面しい男や、抒情的な恋人のよく使う、
「こうして歩いているところを見たら、ひとはどう思うでしょうかね?」
というような、思わせ振りな言葉はあくまで警戒していた。つまり、教養ある女をいっぺんにうんざりさせてしまうような言葉を、調子に乗ってうかうかと口にするようなことはしなかったのである。そのため、多鶴子は若い新聞記者と肩を並べて御堂筋の舗道をわざわざ往復しているということを、必要以上に意識せずに済んだ。自然豹一の心を惹きつけるための無意識な媚はすらすらと発露された。豹一は自惚れても良かったのである。ところが、意外な出来ごとのために、豹一は全然正反対の気持になってしまった。
大丸の前まで来た時だった。
「毛利さんに妹さんがあったら、きっと綺麗な人だと思うわ」
と、相手の嬉しがるような言葉を口に出しかけた多鶴
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