の摩擦は避けたかった。ひとつには、情にもろい編輯長は、村口多鶴子をかばってやりたかった。
 編輯長は豹一の原稿を没にした。が、豹一には些か可哀相な気がした。偶然に恵まれたというものの、それだけの材料をスクープするのは、余程活躍したにちがいないのだ。
(やっぱりあいつは見どころがあった。寒いのに夜なかまでよう活躍しよった。没になったと知ったら、悲観しよるやろ)そう思っているところへ、豹一から電話が掛って来た。
「僕、毛利です」
 編輯長は相手が誰か咄嗟にわからなかった。若い声だから、たいした人間からではないのだろうと、
「毛利て誰やねん?」
「はあ。あの社会部見習の毛利豹一です」
「なんや、君か? なんぞ用か?」
「はあ、あのう、さっきの原稿もう印刷に廻ってますか?」
「まだやぜ。それがどないしてん?」
「まだですか。そうですか。そんなら、大変勝手ですけど、あれを没にして下さいませんか?」
「なんでや?」
「はあ。あのう、ちょっと事情がありまして……」
「そうか。そんなら、君のいう通りにしとくわ」編輯長は微笑した。「そいで、いまどこにいるねん?」
「はあ。心斎橋の不二屋に……」
「誰とい
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