るねん? 恋人《スーチャン》とか?」
編輯長は思いがけぬ豹一の申出でにすっかり気を良くして、そんな冗談をいい、
「それじゃ、くれぐれもお願いいたします」
という豹一の汗のたれるような言葉を耳に残しながら、電話を切った。途端に、編輯長は、
(あいつ村口多鶴子に頼まれよったんやろ。いま会うとるのやろ)
若い部下のはなやかな活動を想像して、全く上機嫌だった。丁度その時土門が前借の印を求めに来たので、盲印を押してやるぐらいだった。
電話を掛け終ると、豹一は多鶴子のところへ戻って来て、記事の発表を見合せることにした旨言った。
「ありがとう。折角お骨折りなすったのに……」
多鶴子はそう言いながら、ふと、(結局この人は昨夜私を救うために、骨を折ってくれたということになるのだわ)と、思った。多鶴子はいきなり起ち上ると、
「ここを出ません?」朗かな声で、一緒に歩きましょうという気持を含めて、言った。
なによりも多鶴子は、豹一が自分の言葉に感動してくれたことが嬉しかった。そして、すぐ希望以上の処置をとってくれた豹一が、多鶴子の持前の虚栄の眼からは、まるで騎士のように見えるのだった。
昨夜彼女
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