ていると思い、思わず瞳がうるんでいた。それを見ると、豹一はますます心を動かされた。極端に走りやすい豹一は、いきなり起ち上った。
「そうですか。わかりました。しかし、尾行記は書いてしまったんです。間に合うかどうかわかりませんが、とにかく社へ電話して発表を見合せてもらうことにします」
そう言うと、豹一は、そんなことが許されるかどうかも思ってみずに、急いで電話を借りに行った。
七
編輯長は豹一の原稿の字の下手糞で、乱暴なのに辟易したが、とにかくざっと眼を通してみた。そして、眼を通してみてよかったと、思った。
(読まんと、社会部長《あのおとこ》のところへ廻したりしたら、えらいこっちゃ。社会部長のこっちゃさかい、あとさきも見んとそのまま印刷に廻しよるやろ)
村口多鶴子の悪口を書いているばかりでなく、「オリンピア」の宣伝部長まで醜行をあばかれているのだった。発表すれば、「オリンピア」から抗議は当然来るべき原稿なのだった。それだけに、特種としての値打は充分あるわけだが、それでは営業部の方が困るだろう。編輯部の立場としては、なるべくなら採用したいところだが、しかし、やはり営業部と
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