をそそったものだ。むろん女優に限らなかったろう。ただ、偶然彼女のプロマイドを拾ったというだけの話だった。が、ポケットから出して、つくづく見れば良い女だと思った。こんな女をとひそかに夢を描き、悩ましく思いつめるようになった。トーキーで声をきいて一層心を惹きつけられた。無理にそんな声を出しているとしか思えぬ、しわがれた悩ましい声は、なにもかも知りつくしたような円熟した女の底の深さを囁いて、佐古の好奇心を刺戟した。
だから、彼女を招聘するために、自分でも不思議なほど熱心になれたのだった。経営者の眼の色に彼女への野心を見て、狼狽したのも無理はなかった。なんのことはない、経営者の好奇心を満足さすため努力したようなものだと、佐古はがっかりしてしまった。
売り上げの額がいつもの三倍にもなった大成功ながら、佐古は昨夜欝々としてたのしまなかった。(おれが儲けるわけではあらへん)全部経営者のふところにはいる金だと思えば、阿呆らしかった。おまけに、村口多鶴子も経営者の女になってしまうのだ。いまいましかった。
他の人は知らず、経営者にだけは佐古も頭が上らなかった。張り合う気などとても持てなかった。可哀相
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