が、しかし今夜ほどそれが胸をしめつけたことはなかった。気の弱りだろうか、豹一はシンと鼻に泪がたまって来た。
思えば今日の豹一は、たしかに泣きたくなるほどみじめだった。しかし、それだからとて、こっそり泪を流すとは、日頃の豹一の流儀から言えば、だらしがないのだった。そんな気の弱まりは、かねがね自分には許してない筈だ。しかし、さすがの豹一も母親の顔を見た途端に、徹頭徹尾心の張りをなくしてしまい、失業のことが針のように感じられたのだった。自他ともに颯爽としていた筈の今日の失業も、にわかにみじめになってしまったのである。
母親が入れてくれたのだと思えば、炬燵の温もりが痛いほど感じられて、豹一は思わず、
「えらいことをしてしまいましてん。失業しましてん。えらい済んまへん」ぶつぶつと声を出して呟いた。
すっかり気が滅入ってしまった豹一は、誰も見ていないので、もうやけにだらしなく泪を流し、しまいに悔恨の気持が妙に動物的なものになってしまって、こつこつと頭を敲きはじめた。しかし、その動作が豹一にふと、道頓堀の勝に撲られたことを聯想させた。すると、豹一ははじめて決然として来た。あわてて泪をこすると、
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