余り残酷だと思ったので、豹一が月給を取るようになってからの分を取ることに負けてやろうと、結局そこへ「手を打つ」ことにした。幾分の思いやりだった。その代りこれまでの分は利子をつけることにした。
安二郎は余りの幸福さにわれを忘れてしまったので、
「お君!」と、思わず女房の名を呼んだ。しかし、べつに改めて言うべきこともなかったので、咄嗟に考えて、用事を吩咐ることにした。
「電気座蒲団の線はずしてんか」自分で立ってはずすと、その間座蒲団の温もりから尻を離さねばならない。それが惜しいのだ。
「よろしおま」お君は立ってコードをはずした。だんだん座蒲団の温もりがさめて行った。すっかり冷たくなってしまうと、安二郎はやっと尻をあげた。途端に痔の痛みが来た。
「あ、痛、痛、あ、痛ア!」
尻を突きだしたじじむさい中腰で寝床の方へ歩いて行きながら、安二郎は、
(誰がなんちゅうても豹一から下宿代を取ってこましたるぞ)と、力んだ。(取る権利が無いとは言わせんぞ。そや。おれはあいつの親や。親ならどんな権利でもあるネやぞ)安二郎はこれまで豹一を負債者とばかり考えていたので、実は豹一が、息子であることにうっかりして
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