てだった。深くは気にかけなかったが、しかし犬の遠吠をきいていると、戸外の寒さが想いやられた。安二郎がけちだから、ほんのちょっぴり炭火をいれているだけだったが、それでも家の中はさすがに温みはあった。
安二郎は背中を猫背にまるめて、しきりに算盤をはじいていた。算盤をはじいているときほど楽しいことは、またとないのだ。ことにそれが女房に貸しつけた金の元利計算と来ては、ぞくぞくするほどたまらない。夜のふけるのも知らなかった。しかし、繰りかえし計算したあげく、安二郎はおやと、不安になった。安二郎はお君の仕立賃のほか、最近は豹一がお君に渡す月給の幾割かをも右左にまきあげていたので、正直な計算によれば、もはや取るべきものはすっかり取ってしまったどころか、取り過ぎている勘定になっているのだった。安二郎は狼狽した。これ以上お君の手から取りあげるのは不正所得なのだ。われながらも浅ましいほど高い利率を課して来たのに、もうすっかり返済されているとは、なんとしたことか。かえすがえす残念だった。安二郎は自分の計算を疑った。もう一度おそるおそる計算してみた。同じことだった。この上は不正所得であろうとなかろうと、欺し
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