思議なくらいだった。呑気に赤井や野崎と遊び廻っていたことなど遠い昔のようだった。想い出されもしなかった。想い出せば、母親に済まない気持になるところだった。高等学校を止めたということが極く当然のことだったと、今はその気持がすっかり身についてしまった。
高等学校の学資は秀英塾から出ていたから、もう母親は針仕事の必要もないと豹一は思っていたが、そう言う訳には行かなかったのだ。豹一に小遣を送ってやるためだけではない。豹一が中学校へはいった時に、お君は安二郎から金を借りた。借りただけの額は全部渡してしまった筈だのに、安二郎は、
「わいの計算では未だ三百円残ってる。これでもお前のことやから大分利子をまけたってるねんぜ」そしてお君の貰う仕立物の賃をまきあげるのだった。お君は豹一に送るために貯めている金を隠すのに苦労した。
そんな事情がわかると、豹一は、なんと言う夫婦だ、これでも夫婦といえるかと、もう少しで安二郎と別れてしまうように母親を説き伏せるところだった。母親は不平らしい愚痴一つ言わず、「あてはどうでもよろしおま」と言う顔をしているのが、一層あわれだった。しかし、母親と一緒に飛び出して、食べ
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